ブログ

二世帯住宅

小矢部市の山間部で二世帯住宅を設計する機会がありました。計画地は、もともと親世帯が住んでおり今まで離れて暮らしてきた子世帯が、ここで一緒に暮らすことを選択されました。設計を描く上で住宅に求められる快適さや居心地の良さを追求しながら、それと同時に二世帯住宅が抱える課題を解決する必要がありました。それは、親世帯が培ってきた近隣コミニュティの継続と親子間の良好な関係です。具体的な解決方法として、親世帯のキッチン・ダイニングの北面に大きな窓を設けました。窓とは採光や換気、景色を取り入れることが目的なのですが、ここでの窓の取扱いは、近隣へのコミニュティの意思表示です。この窓からは、近隣住人が行き交う姿が眺められたり、あるいは窓越から会話することが出来ます。昔から培ってきた近隣コミニュティを維持していく為にとても大切な役割を担っています。一方、親子間の良好な関係を築く為には、程よい距離感が必要になってきます。設計の中で程よい距離感という曖昧さを持つものを数値化し、図面に落とすことは大変な作業です。なぜなら、曖昧さを数値化するには、経験から得た感覚と俯瞰してみることが出来る客観性が必要だからです。これらのことを踏まえ、この二世帯住宅のリビング間は、中庭を挟み6mとしました。空間どうしの幅や高さ、窓の位置や大きさなど総合的に判断し、お互いの存在感を感じない距離を数値化した結果です。数値化することは、建築にとって大切なことであり、情緒的な感情論ではなく理論的な考え方を用いていかなければなりません。そのことによって、この二世帯住宅が抱える課題である近隣コミニュティや親子関係が、良好に維持されていくのだと考えています。

 

 

新しいコミニュティ

以前、集合住宅を設計したことがありますが、戸建住宅を設計していく上で今後の家づくりのヒントになるのではないかと考えています。時代が進む中で多種多様な住まい方が求められ、その中でも特に地域と繋がるコミニュティの形成の仕方は、大きく変化してきているような気がします。7年前に横浜市で計画した集合住宅も当時、同じようなことを思い設計しました。プライバシーを確保しながら住人同士の緩い繋がりが、心地良い関係性を築くと考え10戸を4棟に分けています。塀など建てることなく建物をズラすことで、それぞれが向かい合うことなく配置され、建物の距離や上下の高さに変化を与え、窓辺には住人の暮らしぶりが垣間見ることが出来るように工夫しました。ただし、住人同士の目線が交わることはありません。窓辺から見える住人の好きなも、例えばインテリア、観葉植物、フィギュア、本などを垣間見ることで、それぞれの楽しい暮らしぶりが分かり、それを元に会話が生まれ、緩い繋がりを形成していくと考えました。この集合住宅で生まれた住人同士の緩い繋がりは、戸建住宅が地域との間に新しいコミニュティを形成していく一つの形だと思います。戸建住宅は、自然環境を最優先させた配置計画や窓辺など大切に設計されてきましたが、今後、地域とのコミニュティ形成の仕方を検討した配置計画や窓辺などが、求められ多種多様に変化し複雑化していくのではないでしょうか?

 

 

響く

アトリエレトノの「レトノ」は、ラテン語で「響く・反響する」という意味があります。設計の原点には、空間の響きが大切であると考えアトリエレトノの事務所名としました。空間の響きとはなんなのか?なぜ大切なのか?響きとは、二つのものが共鳴し合うイメージです。建築における響きとは、空間を構成する物質が、相対的な関わりによって生まれてくるものだと考えています。例えば、庭の緑は絞られた光または、反射光がなければ輝きません。開口部のフレーミングを際立たせる為には、周りにある程度の量の壁が必要です。また、ダイナミック性は空間の面積や体積の大小によって生まれてきます。このように相反するものや、そうでないものもがあり、空間を構成するあらゆる物質において、無限の可能性があります。そのように空間を響かせることができれば、精神性の感じる静謐な空間となります。一般的に住宅には機能性を求められますが、一見無駄だと思われるようなこの行為こそが、最も最優先されるべきものなのです。その可能性を今年は、もっと深く探求していきたいと思います。それが人の心を動かし、日常に小さな気付きをもたらし、住宅の最大使命である、人生の幸福につながっていくのだと考えています。

 

 

 

アマン東京

アマン東京は、アマンリゾートの主要デザイナーであるケリーヒル氏が、手掛けた世界初の都市型ホテルです。アマンリゾートのコンセプトは、その地の伝統や文化を取り入れることを大切にしています。アマン東京も日本の伝統的な意匠である障子や和紙を用いて、静謐さや上質さがありながらモダンな空間となっていました。また、別棟にあるザ・カフェBYアマンは、3年以上をかけて1つずつ選び抜いた100種類以上の植物で構成されいます。店内に入るまでのアプローチは、そんな緑に囲まれ、まるで森の中を散策しているような感じを受けます。ガラス張りになっている店内は、とても洗練されていて、どの席からも緑が美しく見えます。都心のビジネス街であることを忘れさせてくれる、心癒される憩いの場となっています。アフターヌーンティーは、見た目も美しくとてもおいしかったです。

 

石という原始的な素材が放つ力強い雰囲気が好きなので、人の手が加えれられていない荒々しさの残る鉄平石や上質な雰囲気をもつ芦野石を使い、内部の床を仕上げました。同じ石でも採れる場所によって硬度や色目が違い、それにより扱い方が違ってくることを職人さんから教えてもらい、改めて石という素材について多くのことを学ぶことができました。建築とは、設計者、監督、職人との共同作業だということを再認識しました。この住宅に一歩入ると、石の持つ力強い雰囲気と内包感を感じる空間構成によって、本能的な居心地の良さに繋がるのではないかと考えています。

 

 

 

桜並木の見える家

桜並木の美しい川沿に今年の夏完成した住宅です。ロケーションを活かす為に、外に開いた開放感のある設計を描きました。ダイニングの上部に吹き抜けを設け、大きな開口を取ることで東側の桜並木の景色と光を取り込んでいます。東側に開放感を求めつつ前面道路に面している為、プライバシーを調整する格子戸を設けました。格子戸を通して見る桜並木の表情は、日本的なおもむきを感じます。テラスは中間領域を創り出し、日本人の好きな縁側のようです。このテラスの奥行きの深さが、外との一体感をより強く生み出してくれます。来年、桜が咲く頃にもう一度訪れて写真を撮りたいと思います。

 

光の温かさ

完成した住宅は、北側が道路で、三方が建物に囲まれるという敷地での計画でした。住宅に必要な居心地のよさを得られる内包感と開放感を両立するには、光や風など自然を取り込む中庭の位置がとても重要でした。敷地周辺の環境からまずそれを北側に配置することを考えました。建物の高さと屋根形状・開口部などを工夫することで道路に面した北側の庭でも反射光などを利用して十分な明るさが得られると思ったからです。しかし、北庭では光の明るさは確保出来ても感覚的な温かみが感じられない。光のもつ温かさを感覚的に感じれない住宅は、居心地の良さにつながらないのではないかと考え直し住宅の中央部に配置する計画としました。町家のように中庭を中央部に設けたことで南側からの光(感覚的な温かさを感じる光)を得ることができました。開口部をコントロールすることで内包感を感じ、吹き抜けに寄り添うように螺旋階段が伸びていくことで開放感も同時に感じれます。なによりも南側からの光は、木々の影を床いっぱいに落としてくれます。それらすべてが居心の良さをもたらしてくれるのだと思います。設計を進める途中で、解決するべき色々な課題や問題に直面します。その問題を解決する手段を一度複雑化してしまうと際限がありません。やはり問題解決の為には出来るだけシンプルに考え、最短ルートで答えを導くことが大切だと思いました。

 

 

 

静謐なひととき

最近完成した住宅は、施主様の持つ雰囲気を踏まえ「静謐さ」のある住宅がよいと考え設計しました。静謐さを出す為に、光の存在感を際立たせなければならないと考え床や壁、天井は彩度を下げた色味を選び、仕上げは微妙な凹凸がでるものを選んでいます。また、壁を照らすトップライトからの光は、吹き抜けの開口を狭くすることでより絞られ、淡い光をつくり出します。そして、大きく開け放った開口部の前にペレットストーブを配置することで、空間に奥行が生まれ、外の緑や、壁、床の石それぞれが、お互いを際立たせるように考えました。時を重ねるごとに、緑が育ち永く愛され住み継がれていく住宅になっていくことを心から願っています。

 

アンモナイト

私は、アンモナイトの化石を探すことが趣味です。以前にブログで紹介しましたが最近、とても良い写真が撮れましたので紹介します。発見した場所は、東京駅近くの大手町タワーの壁です。アンモナイトの化石を見るとワクワク、ドキドキがとまりません。黄褐色や赤褐色のイタリア産の大理石の中には、化石が埋まっていることが多いです。大理石の中にある化石を通じて古い歴史を感じさせてくれます。日常にあるちょっとした発見が、私にとってはとても癒やしになります。コレクションが増えとても充実した一日になりました。

永く愛されるもの

CARL・HANSEN&SONからCH23の復刻版が発売されたので見て来ました。私が初めて北欧家具を見たのは、建築を学び始めた頃でした。その当時の建築雑誌には、必ずといっていいほどダイニングには、Yチェアが置いてありました。ウェグナーは、シェーカー家具の影響を受けていたこともあり、とてもシンプルな椅子のデザインが多く、その時代には恐らく違和感を覚える人が多かったのではないかと思います。しかし、現代では飽きられることなく永く愛される椅子として存在しています。飽きられず永く愛されるということは、どの分野においても(音楽・絵画などなど)作り手の信念から生まれる違和感がそうさせるのではないかと思っています。誰もが初めて見聞きしたことが、それもまでの常識や価値観と違うこから生まれる違和感こそが、大切な感覚なのではないか?復刻版CH23の椅子を見ながらそんなことをふと考えた一日でした。