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とらや・赤坂店

「とらや・赤坂店」は、扇形の敷地に合わせ設計された為、扇形の独特の形をした建物です。赤坂見附駅から徒歩約7分、目の前には赤坂御用地があり、緑を望める豊かな場所に建てられています。この建物を設計されたのは「とらや・ 東京ミッドタウン店」「とらや・京都一条店」等を手掛けた建築家の内藤廣氏です。内藤廣氏は「簡素にして高雅」を念頭に置いて設計をされたとのことです。階段、天井、壁にふんだんに使われた檜、黒漆喰、格子などが日本の美を感じさせてくれます。 地下1階、地上3階建ての建物で地下1階には、和菓子や日本文化を発信する為のギャラリー・イベントスペースとなっています。2階は和菓子の売り場となっていて3階には、菓子製造場「御用場」とカフェ「虎屋菓寮」が併設しています。 テラス席で酒饅頭を頂きましたが、酒の独特の風味と上質なしっかりとした甘さがありながらも、後味がすっきりとしていてとても美味しかったです。

 

明治神宮ミュージアム

明治神宮の南参道に明治天皇と昭憲皇太后のゆかりの品々を展示する、明治神宮ミュージアムが10月26日に開館しました。設計を手掛けたのは、世界的に有名な建築家の隈研吾氏です。日本の伝統的な数寄屋とモダンを合わ持った雰囲気で、建物全体が低く抑えられていて緑の景観によく溶け込んでいました。
開口部のL字型、ハイサイドの設け方、2Fのはね出し方や開口などで緑を三次元的に捉え、その存在を立体的に浮かび上がらせ際立たせていました。そして、その効果によって緑をより近くに感じることを体感できました。 これまでに私が緑との一体感を得るために考えてきた手法とは異なる手法が、発見できとても貴重な経験となりました。

 

ロイズ・アンティークス青山

ロイズ・アンティークスは、東京のアンティークショップの中でも老舗的な存在です。1988年オープンして以来、全国に8店舗あります。伝統的な英国アンティーク家具を中心に様々な時代のものが置いてあります。重厚でありデコレイティブなマホガニー家具や合板や金属素材を用いたデザイン性の高いアイテム、ニーズに合わせたオーダーメイド可能な家具まで幅広く扱っています。
現在、設計している住宅に合う家具をいくつか見つけてきました。伝統的な英国の家具と和モダンな雰囲気の住宅にどのようなマッチしていくのかとても楽しみです。

 

中間領域

先日、「建築知識」という建築専門誌の取材を受け、中間領域についてお話しをさせて頂きました。取材者の方から全国の建築家の方々の中間領域に対する考え方や設計方法を聞くこともできて、とても参考になりました。広く自然が豊かな敷地と街中の狭い敷地とでは、全く異なる作り方をしなければならないこと。その為には、縁側、軒、土間、大屋根、分棟、螺旋など様々な組み合わせを考えなければならないことなど気付きがありました。
取材の最後に一枚の写真を見て頂きました。以前私が設計したフレーム効果を利用し、格子や土間との組み合わせによって、外を内に呼び込むと考えた住宅の写真です。取材者の方から、「子供の頃に手で双眼鏡をつくり遠くを眺めたことをやりましたが、あれと同じ効果ですか?」と聞かれました。そういえば私も小学生の頃によくやっていたことを思い出し懐かしく思いました。とても有意義な時間を過ごせました。

 

螺旋、幾何学

私は、アンモナイトを探すのが好きで以前ブログで紹介しました。アンモナイトの化石は世紀を超えて現代に存在し、そのままの姿で見えることに感動を覚えます。それと同時にこの螺旋状の形がとても魅力的です。私たちが存在する太陽系のある天の川銀河は渦巻形ですし、また旧約聖書の創世記の中に登場するバベルの塔も螺旋状です。物語の始まりはいつも螺旋から始まっているような気がします。一方現代においては、私たちの身近なところにも様々な螺旋状が見られます。例えば、人のDNAは二重螺旋構造、耳の中にも小さな螺旋状の器官があります。その他象の牙や鹿の角、 貝殻、オウムガイ、松ぼっくりなどフィボナッチ数列や対数螺旋がみられ、建築においては京都の薬師寺が有名です。これらが人を魅了するのは、潜在意識の中にある人種、性別、過去世を超越した何か共通な意識があるのだろうと思いました。そこを深く考察していくと自然界に存在する動植物や物質は、すべて幾何学的な法則に則り創られていることが分かりました。そして「意識」もそうです。そうすると私たちの身の回りには、幾何学しか存在しないことになります。幾何学をさらに探求していくと、私たちは幾何学的エネルギーフィールドの中に存在しています。その幾何学的エネルギーフィールドを活性化させるきっかけを与えることが、建築の役割であり、その活性化された幾何学的エネルギーフィールドにおいては、心の調和がもたらされることでしょう。

 

谷村美術館

谷村美術館は、私が高校二年生の時にモノクロの写真を見て衝撃を受けた建築物です。1983年に開館、設計は建築界の巨匠、村野藤吾氏最晩年の作品で、日本最高峰の木彫芸術家、澤田政廣氏の仏像「金剛王菩薩」「光明佛身」「彌勒菩薩」等10点を展示した美術館です。当時、私の身の回りにある建築物とは全く異なる様相をしていたことに驚きました。そして建築や建築史を学ぶにつれて、それが建築物の原点であることを知りました。谷村美術館は、荒涼とした砂漠の中の遺跡のイメージで設計されていて内部空間は、光の取り入れ方を工夫し洞窟のようなイメージで作られていました。私たちは、XYZ軸という三次元的(床壁天井)な分離された建築物に慣れ過ぎてしまっているので、この建築物のようなそれぞれの境界が消された空間を見ると、何となく物理次元の法則を超えたものを感じ、心が高まります。建築物は一般的に大きな開口を設けて開放感を得たり、壁の量や天井の高さを調整して内包感を感じさせていますが、この建築物はこのように、今までの建築物で語られてきた開放感や内包感とは全く違う次元にあり、壮大な広がりを感じられずにはいられません。この建築物は、意図的に意識の拡大を導く為に作られているように感じました。実際にこの建築物の中にいると、優しく包まれた感覚を持ちえながらも宇宙的膨張を感じる不思議な体験をしました。

 

藤森照信建築探訪

長野へ行った際に茅野市に立寄り建築家であり、建築史家でもある藤森照信氏の代表作「神長官守矢史料館(じんちょうかんもりやしりょうかん)」を訪れて来ました。この建物は、守矢家の文書を保管・公開する博物館で江戸時代まで諏訪大社上社の神長官を務めた、洩矢神の子孫である守矢家の敷地内に建築されました。構造は鉄筋コンクリート造りで自然素材で仕上げてあります。屋根には諏訪産の鉄平石、外壁にはサワラの割板、内壁にはモルタルに切りワラを混ぜた上に土を塗り、窓は手吹きガラスが使われています。そして特徴的なのは、玄関正面に4本の地元産のイチイの柱が、屋根を突き抜け建てられているところです。独特なフォルムと自然素材が放つ雰囲によって周囲の景観にとても馴染んでいます。また、資料館の近くには「空飛ぶ泥舟」や「高過庵」や「低過庵」などの茶室もあります。高過庵は、高さ6mの2本の栗の木の上に建築されていて、アメリカのTime誌では「世界でもっとも危険な建物トップ10」に選ばれています。
藤森氏の建築は建築史家として建築の歴史、文化などを背景にしているところが大きく影響しています。おそらく藤森氏は、歴史を読み解くことで人間の潜在意識の中にある人類共通の普遍意識を見ることが出来たのだと思います。意識をどんどん拡大させ何にも囚われず、それを純粋に具現化していることに深く感銘を受けました。私が目指している心の調和をもたらす建築、そしてその先にある二元から一元への世界、それを表す象徴的な建築だと感じました。もしかしたら潜在意識、顕在意識この両方を拡大していく中で宇宙意識と繋がり、建築と藤森氏の波長が同調し共振しすることで、このような独創的な建築が設計出来たのではないかと思いました。

 

パウダールーム

パウダールームやバスの空間の質を高めることは、住宅全体の雰囲気を決める大切な要素です。素材選び、光の取り入れ方や量などによって雰囲気はガラリと変わります。そして、もう一つ重要なのは使い勝手の良さです。一枚目の写真は、鏡の前に立った時に顔に影ができないようにする為、鏡の後から光を取り入れ女優ミラーのような効果を出しています。そして、光を拡散する為に使った障子には、和紙ではなく水に強く破れない素材を使用しています。また二枚目の写真のように、パウダールームとバスを中庭で一体化する方法で緑を取り込み、室内を明るくし開放的にします。そして緑が鏡に写り込むことで、毎朝見る緑の些細な変化に気づき心を癒し豊かにしてくれます。
柔らかい光や緑に満たされたパウダールームやバスは、毎日の身支度におけるストレスを軽減し、一日の始まりを気持ちの良い気分へと変えてくれるのではないでしょうか。

 

開かれた住宅

以前、ブログで集合住宅における「新しいコミュニティー」という題材で書きましたが、今回は戸建住宅における、コミュニティーの在り方にについて書きたいと思います。今の流れはコートハウス的な少し閉じた空間から、地域に開かれた建物や職住一体の建物に変化してきています。その主な理由は、少子高齢化、働き方の変化、家族との関係性の変化などです。このようなことによって今後は、さらに地域や社会との繋がりを求める建物が増えていくのではないかと考えています。
今回は、コートハウスではなく外に開かれた住宅を設計しました。街との繋がりとは言っても、住まう人の感情や心の動きを無視して暴力的に開くのではなく、心が自然と外に向かうように潜在意識に着目して設計しました。
この建物は、吹き抜けに面し大きな開口を設け、その開口の先には植栽スペースとアプローチを挟んで下がり壁を設けています。この下がり壁によって内包感をベースとした意識が、外に拡大していきます。一方、外からの意識は下がり壁によって内部への関心が、あまり向かないようになっています。そのお互いの意識の関係性が、地域と緩く繋がる心地よさを生んでいると思います。そのような緩い繋がりを体験することで、より意識が外へと拡大し、さらに地域との密なコミュニケーションが生まれるのではないでしょうか。そのような気づきを与えることが、建築の役割の一つでもあると考えています。

 

おおきな木

建築雑誌に掲載されていた絵本が気になり購入しました。題名は「おおきな木」作者はシェル・シルヴァスタイン、翻訳は村上春樹、38か国900万部の世界的ベストセラーになった絵本です。
少年は大きな木によじ登り、葉っぱを集め毎日遊んでいました。大きな木は幸せでした。やがて少年は青年になり、大きな木と遊ばなくなり様々な要求をするようになります。お金をほしがると大きな木は、リンゴを与え町で売ってそのお金で幸せにおなりなさいと言いました。そして今度は家がほしいと言うので、大きな木はすべての枝を与えます。それでも絵本の中では「木は幸せになりました」とつづられています。そして最後には、大木である自らの幹を与えるのです。やがて時が流れ老人となった少年は、久しぶりに切株だけとなった大きな木に会いにきます。大きな木は「わたしにはもう何もないの。あなたにあげられるものが・・・」と告げると少年は「僕にはもう、特に何も必要としない。腰を下ろして休める、静かな場所があればそれでいいんだ。」と言います。切株となった大きな木は「それなら、古い切り株なら腰を下ろして休むにはピッタリよ。いらっしゃい、坊や、私にお坐りなさい。座って、ゆっくりとおやすみなさい。」と言います。そして「木は幸せでした」と物語は締めくくられています。
大きな木は、リンゴや枝という物質に愛を変換し惜しみなく与えています。大きな木にとって与えるものは何でもよかったのです。私たちが受け入れてきた、交渉と取引をベースとした愛ではなく、大きな木が与えていたのは本物の愛(アガペー)です。この絵本のテーマは、アガペーがもたらす幸せの本質を教えてくれているのだと私は感じました。

この絵本の訳者である村上春樹さんはあとがきにこのように書いています。
多くの人は、この木を母性の象徴としてとることでしょう。しかし、それはもちろん一つの解釈に過ぎません。(中略)・・・ あなたがこの物語の中に何を感じるかは、もちろんあなたの自由です。それをあえて言葉にする必要もありません。その為に物語というものがあるのです。物語は人の心を映す自然の鏡のようなものなのです。