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響く

アトリエレトノの「レトノ」は、ラテン語で「響く・反響する」という意味があります。設計の原点には、空間の響きが大切であると考えアトリエレトノの事務所名としました。空間の響きとはなんなのか?なぜ大切なのか?響きとは、二つのものが共鳴し合うイメージです。建築における響きとは、空間を構成する物質が、相対的な関わりによって生まれてくるものだと考えています。例えば、庭の緑は絞られた光または、反射光がなければ輝きません。開口部のフレーミングを際立たせる為には、周りにある程度の量の壁が必要です。また、ダイナミック性は空間の面積や体積の大小によって生まれてきます。このように相反するものや、そうでないものもがあり、空間を構成するあらゆる物質において、無限の可能性があります。そのように空間を響かせることができれば、精神性の感じる静謐な空間となります。一般的に住宅には機能性を求められますが、一見無駄だと思われるようなこの行為こそが、最も最優先されるべきものなのです。その可能性を今年は、もっと深く探求していきたいと思います。それが人の心を動かし、日常に小さな気付きをもたらし、住宅の最大使命である、人生の幸福につながっていくのだと考えています。

 

 

 

アマン東京

アマン東京は、アマンリゾートの主要デザイナーであるケリーヒル氏が、手掛けた世界初の都市型ホテルです。アマンリゾートのコンセプトは、その地の伝統や文化を取り入れることを大切にしています。アマン東京も日本の伝統的な意匠である障子や和紙を用いて、静謐さや上質さがありながらモダンな空間となっていました。また、別棟にあるザ・カフェBYアマンは、3年以上をかけて1つずつ選び抜いた100種類以上の植物で構成されいます。店内に入るまでのアプローチは、そんな緑に囲まれ、まるで森の中を散策しているような感じを受けます。ガラス張りになっている店内は、とても洗練されていて、どの席からも緑が美しく見えます。都心のビジネス街であることを忘れさせてくれる、心癒される憩いの場となっています。アフターヌーンティーは、見た目も美しくとてもおいしかったです。

 

石という原始的な素材が放つ力強い雰囲気が好きなので、人の手が加えれられていない荒々しさの残る鉄平石や上質な雰囲気をもつ芦野石を使い、内部の床を仕上げました。同じ石でも採れる場所によって硬度や色目が違い、それにより扱い方が違ってくることを職人さんから教えてもらい、改めて石という素材について多くのことを学ぶことができました。建築とは、設計者、監督、職人との共同作業だということを再認識しました。この住宅に一歩入ると、石の持つ力強い雰囲気と内包感を感じる空間構成によって、本能的な居心地の良さに繋がるのではないかと考えています。

 

 

 

桜並木の見える家

桜並木の美しい川沿に今年の夏完成した住宅です。ロケーションを活かす為に、外に開いた開放感のある設計を描きました。ダイニングの上部に吹き抜けを設け、大きな開口を取ることで東側の桜並木の景色と光を取り込んでいます。東側に開放感を求めつつ前面道路に面している為、プライバシーを調整する格子戸を設けました。格子戸を通して見る桜並木の表情は、日本的なおもむきを感じます。テラスは中間領域を創り出し、日本人の好きな縁側のようです。このテラスの奥行きの深さが、外との一体感をより強く生み出してくれます。来年、桜が咲く頃にもう一度訪れて写真を撮りたいと思います。

 

光の温かさ

完成した住宅は、北側が道路で、三方が建物に囲まれるという敷地での計画でした。住宅に必要な居心地のよさを得られる内包感と開放感を両立するには、光や風など自然を取り込む中庭の位置がとても重要でした。敷地周辺の環境からまずそれを北側に配置することを考えました。建物の高さと屋根形状・開口部などを工夫することで道路に面した北側の庭でも反射光などを利用して十分な明るさが得られると思ったからです。しかし、北庭では光の明るさは確保出来ても感覚的な温かみが感じられない。光のもつ温かさを感覚的に感じれない住宅は、居心地の良さにつながらないのではないかと考え直し住宅の中央部に配置する計画としました。町家のように中庭を中央部に設けたことで南側からの光(感覚的な温かさを感じる光)を得ることができました。開口部をコントロールすることで内包感を感じ、吹き抜けに寄り添うように螺旋階段が伸びていくことで開放感も同時に感じれます。なによりも南側からの光は、木々の影を床いっぱいに落としてくれます。それらすべてが居心の良さをもたらしてくれるのだと思います。設計を進める途中で、解決するべき色々な課題や問題に直面します。その問題を解決する手段を一度複雑化してしまうと際限がありません。やはり問題解決の為には出来るだけシンプルに考え、最短ルートで答えを導くことが大切だと思いました。

 

 

 

静謐なひととき

最近完成した住宅は、施主様の持つ雰囲気を踏まえ「静謐さ」のある住宅がよいと考え設計しました。静謐さを出す為に、光の存在感を際立たせなければならないと考え床や壁、天井は彩度を下げた色味を選び、仕上げは微妙な凹凸がでるものを選んでいます。また、壁を照らすトップライトからの光は、吹き抜けの開口を狭くすることでより絞られ、淡い光をつくり出します。そして、大きく開け放った開口部の前にペレットストーブを配置することで、空間に奥行が生まれ、外の緑や、壁、床の石それぞれが、お互いを際立たせるように考えました。時を重ねるごとに、緑が育ち永く愛され住み継がれていく住宅になっていくことを心から願っています。

 

アンモナイト

私は、アンモナイトの化石を探すことが趣味です。以前にブログで紹介しましたが最近、とても良い写真が撮れましたので紹介します。発見した場所は、東京駅近くの大手町タワーの壁です。アンモナイトの化石を見るとワクワク、ドキドキがとまりません。黄褐色や赤褐色のイタリア産の大理石の中には、化石が埋まっていることが多いです。大理石の中にある化石を通じて古い歴史を感じさせてくれます。日常にあるちょっとした発見が、私にとってはとても癒やしになります。コレクションが増えとても充実した一日になりました。

永く愛されるもの

CARL・HANSEN&SONからCH23の復刻版が発売されたので見て来ました。私が初めて北欧家具を見たのは、建築を学び始めた頃でした。その当時の建築雑誌には、必ずといっていいほどダイニングには、Yチェアが置いてありました。ウェグナーは、シェーカー家具の影響を受けていたこともあり、とてもシンプルな椅子のデザインが多く、その時代には恐らく違和感を覚える人が多かったのではないかと思います。しかし、現代では飽きられることなく永く愛される椅子として存在しています。飽きられず永く愛されるということは、どの分野においても(音楽・絵画などなど)作り手の信念から生まれる違和感がそうさせるのではないかと思っています。誰もが初めて見聞きしたことが、それもまでの常識や価値観と違うこから生まれる違和感こそが、大切な感覚なのではないか?復刻版CH23の椅子を見ながらそんなことをふと考えた一日でした。

 

抽象化

光を抽象化することで、今まで気づかなかったその存在を改めて強く感じることが出来きます。例えば、すりガラスを透すことでカスミのような淡く輪郭を持たない光を創り出し、その光によって背景の木々の緑を美しいグラデーションに仕立てました。また、障子の和紙を透した光は、柔らかく幻想的な印象を与え人の心を魅了し落ち着かせてくれます。窓は、大きい方が良いとする価値観から離れ、程よい窓の大きさにすることで、理想的な借景と陰影が得られます。物事を抽象化することで精神性の深いものを目指す日本人の感性・美学・沈黙の美しさがあるのではないかと感じ設計しています。

 

灯り

夜の落ち着いた雰囲気を創り出す為に、照明計画はとても大切です。照度・位置・器具選定などにとても気を遣います。しかし、照明を点灯しない日中は、照明器具の存在がとても気になります。なぜなら、照明器具によって日中の光を妨げてはいけないと考えているからです。特に天井をダウンライトで埋め尽くしては、光の美しさを感じられなくなります。人が光に包まれ癒されると感じるには、天井や壁を綺麗に仕上げバランスの取れた空間構成にしなければなりません。また、ダウンライトの灯りは空間に強く影響しすぎると、私は感じてしまいます。そのかわり私は、明るすぎず暗すぎず、適切な照度を補い、尚且つ主張しすぎない間接照明を用いることが多いです。これにより夜も照明器具の存在を消し、灯りだけを際立たせることで上質で落ち着いた雰囲気になると考えているからです。また、天井の高いダイニング空間ではペンダント照明を採用しています。テーブルの上にペンダント照明があることで空間に求心性を与えそこに人が集まるような和やかな印象をもたらすと考えているからです。アトリエレトノのコンセプトである、上質で落ち着いた雰囲気を創り出すための方法が他にないのか?まだ見つけていないのではないかと模索し続けています。だからこそ照明計画一つ一つ丁寧に考え俯瞰し計画しなければならないと考えています。現在、計画している住宅でもいろいろ模索し探求し少しでもコンセプトに近づけたらと思います。