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会話の密度

住宅設計のポイントのひとつにLDKの配置があります。敷地に余裕があり方位などの条件がいくつか合えば、リビング・ダイニングをズラす配置をしたり、あるいは中庭でリビングとダイニングを分けたりします。一般的にLDKは広い一室の空間が多いですが、会話の密度が同じになってしまうと感じるので、一室の場合でも何かしらの工夫を施す必要があると思っています。会話の密度とは、例えば茶室のような小さな部屋とホールのような大空間では、なされる会話の内容が同じテーマであっても違ってきます。他にも日本料亭の畳の部屋でなされる会話と、ホテルのラウンジでなされる会話とでは違ってきます。そのことを私たちは生活の中で経験上知っていて、求める会話により無意識に空間を変えています。それだけ空間、建築は心に影響を及ぼし、会話の密度に影響を与えていることが分かります。
日常を過ごす住宅においては、リビング・ダイニングでなされる会話の密度は更に細分化され、朝、昼、夜の時間帯によって変わってきます。特に一日の始まりである朝のダイニングでの過ごし方は、その日一日の気分を決めると考えています。また夜のリビングでの過ごし方が、明日への活力を生むと考えています。
このような日常の中にある人の無意識の行動を観察し、潜在意識下にある欲求を空間に具現化していくことが大切だと考えています。

次回はダイニングについて更に深堀りしたいと思います。

 

ボイジャー1号、2号

「数学は論理の音楽であり、音楽は情緒の数学である」という素敵な言葉が、ある知人から紹介して頂いた、NHKラジオ深夜便から聞こえてきました。私はその言葉に一瞬にして引込まれてしまいました。その声の主は理学博士の佐治晴夫さんです。佐治さんは、1/fゆらぎを扇風機に応用したり、家庭用ビデオVHSの3倍モードなど開発した一人です。また、宇宙探索機ボイジャーに搭載したゴールデンレコードの中に、数学的規則性を持つバッハのプレリュードとC52の音の収録を提案した人物としても知られています。
ゴールデンレコードには、115枚の画像と波、風、雷、鳥や鯨などの動物の鳴き声や多くの自然音、様々な文化や時代の音楽、6000年前にシュメールで話されていたアッカド語から始まり最後には中国の呉語が収録された55種類の言語のあいさつ、ジミー・カーター大統領と国際連合事務総長クルト・ヴァルトハイムからのメッセージなども加えらています。
ボイジャーは、太陽系の惑星および太陽系外の探査と、地球外知的生命体へのコンタクトをミッションとし1977年に打上げられました。木星の大赤斑や土星の輪の構造、海王星や冥王星の写真を残しています。そして、1990年約60億km離れた場所から振返り、撮影した太陽系の惑星「家族写真」を撮り終えた34分後、ボイジャーのカメラの電源は切られ、この画像が最後となりました。これまで一度も振り返ることなく外の世界に目を向けて進み続けていましたが、この瞬間一度だけ振り返っています。その後は二度と振り返ることなく地球、人類の希望、未来を一心に背負い今も勇敢に深宇宙を進み続けています。
私たちが出来ない宇宙探索を私たちの代わりに目や手足となって宇宙を探索し続けていることを思うと、尊敬と感謝の気持ちで胸がいっぱいになります。
ボイジャーは今でもNASAの人たちから、我が子のように愛され続けています。いつか地球外知的生命体が、ゴールデンレコードから発せられる地球からのメッセージを受け取り、コンタクトを取ってくることを楽しみに待っています。

 

アルケミスト ~夢を旅した少年~ を読んで

1988年に出版されたブラジルの小説家パウロ・コエーリョの代表作「アルケミスト -夢を旅した少年」は、これまで6500万部以上を売り上げ世界的ベストセラーになっています。また、67か国語で翻訳され現代の作家としてギネス世界記録に名を刻んでいます。
本の裏表紙には次のように書かれています。羊飼いの少年サンチャゴが、アンダルシアの平原からエジプトのピラミッドに向け旅に出た。そこに、彼を待つ宝物が隠されているという夢を信じて。長い時間を共に過ごした羊たちを売り、アフリカの砂漠を超えて少年はピラミットを目指す。「何かを強く望めば宇宙のすべてが協力して実現するように助けてくれる」「前兆に従うこと」少年は錬金術師の導きと旅のさまざまな出会いと別れのなかで、人生の知恵を学んでいく。
2020年12月22日、木星と土星が重なるグレート・コンジャクションが起こり約240年続いた地の時代(金銭・物質・権威等重視)から風の時代(知性・精神・個人等重視)に移行しようとしています。風の時代においては、ワクワクや直感、シンクロニシティとハートで感じることが重要です。この本は32年前に発売されていますが、これからの風の時代を生きる私たちにとって、とても大切なことが書かれている本だと感じました。
この主人公の少年を見ていると子供の頃に感じていたワクワクする気持ちや、そのワクワク従って行動していたことを思い出しました。今年を振り返ってみると仕事を通して様々な静かなるワクワクがありました。そして、その静かなるワクワクを通して色々な素敵な方々と出会い多くの気付きや学びを体験し、成長できたことを深く感謝しています。
皆様方どうぞ楽しいクリスマス、年末をお過ごしください。

 

最近完成した住宅

先日完成した住宅は車二台分のガレージ、子供部屋、主寝室、和室の他に奥様のフラワー教室が出来る趣味室が設けてあります。特徴的なのはリビング、ダイニングの間に設けた坪庭です。この坪庭より東の光を取り込んでいます。また、深い庇がついておりこれによって入ってくる光の量を調整しています。そして庇がリビング、ダイニングの天井と繋がっている為、室内感がさらに強まり空間の一体感が生まれます。また、坪庭とは別に西側には中庭があり、BBQなどアクティブに使えるようになっています。
リビング、ダイニングの空間全体は、開口部やその他のディテール、床や壁、天井などの様々な素材を検討し情報量を減らしています。ただ減らすのではなく適切な情報量による空間表現が大事だと思っています。
この住宅は坪庭からの朧げな朝の光、トップライトから入る時を告げる光、庭からの暖かな光など様々な光と共に日常を過ごすことが出来ます。そして光と同時に存在する陰影の美しさも感じ取ることができます。

 

夜の川沿いのカフェ

以前ブログでご紹介した川沿いのカフェが、OPENに向けて少しずつ家具やインテリア、書籍などが飾られ始めました。オーナー様のこだわりや好きなモノが置かれていくことで、個性的で静かな落ち着きのある印象を受け、1960年代に建築された建物に宿るモダニズムに類似した雰囲気を感じました。写真を趣味としているオーナー様が、これまでに撮影された作品がギャラリースペースに飾られると、より一段と雰囲気が増していくと思います。
建築が人や家具、インテリアを輝かせ訪れる人たちの心を動かし、五感で感じる力を高めその先の領域にある感性へと繋ぐきっかけになるだろうと期待しています。なお、この建物はYouTube「川沿いのカフェ」にて公開しています。

※下記の写真はオーナー様よりご提供して頂きました。

 

植物の成長、豊かな日常

先日、三年前にお引渡しをしたお宅を訪問して来ました。引渡時よりもリビング、ダイニングの中庭にある緑が大きく成長していて、室内との一体感が増していました。当時、緑の選定や距離や位置、壁との距離や高さなど未来の見え方や空間との調和を想像し設計したことを思い出しました。それが現実になっていて大変うれしくなりました。また、アトリエや趣味室から見える緑も程よい距離感へと成長していました。作品づくりに疲れた時には、外の緑が目と心を癒してくれているそうです。
自然を眺めながら趣味に没頭し、豊かな日常を過ごされていることが、とても印象的でした。これからさらに年月を重ねていくと、新たな気づきがもたらされ感性が育まれていくと確信できた一日でした。

※YouTubeでご覧いただけます。「とある休日。」

 

Healthian・wood

今年3月に富山県立山町に複合施設「ヘルジアン・ウッド(Healthian・wood)」がオープンしました。設計を手掛けたのは、新国立競技場を設計した建築家・隈研吾氏です。東京ドーム2個分(約10ヘクタール)という広大な敷地にレストランやイベントスペース、宿泊施設などを建築しています。「水田と立山連峰に溶け込む村のような建築群にしたい」との隈氏のコンセプトを体感できます。レストランの建物には、周辺の田んぼで取れた藁が使用してあり装飾と断熱の両方を兼ね備えています。そして、立山連峰を望む大きなガラス窓が特徴的です。
ヘルジアン・ウッドのHPには、Tateyama Beauty&Wellness Villageとの記載があるだけに身体に優しいハーブが香るパンや10種類以上のハーブティーなどがあり自然素材にこだわっています。
目の前に広がる立山連峰や田園風景を眺めながらハーブティーを飲みましたが、身体がポカポカしてきて心も暖かくなりました。

 

光の粒子、絶対的な安心感

最近、外を歩いているとよく虹に遭遇します。虹を見ていると光が粒子であることを実感します。その光は、柔らかく、軽く漂っている波のような存在に見えます。私は虹のような光の粒子を感じられるような光が好きです。それを空間の中でルーバーや障子を使い光を拡散して体現しています。この粒子を感じられる光に包まれると、なんだかそこには絶対的な安心感が存在しているように感じられます。歴史的な建築を見ると、そこに施された装飾よりも、光の方が精神に圧倒的な影響を及ぼしていることがよくわかります。今までの物質的な価値観から精神的な価値観へ移行している現在において、この光が及ぼす影響はさらに大きくなっていきます。今後は、絶対的な安心感を感じる建築がますます求められていくと考えています。

 

まだまだ暑い日が続いていますが、月が綺麗に見える季節になってきました。以前、自然豊かな住宅地で設計した住宅は、東南からの太陽の光を取り入れる為に大開口や吹抜けをつくりましたが、目的のメインは満月を眺めることです。ダイニングから眺める満月や二階の吹抜けに面して設けたスタディーコーナーから眺める満月など、月は±35度の範囲で周期的に方角が変わりますので、月の見える方角に合わせ開口部のデザインや大きさを調整しました。太陽のエネルギーはとてもパワフルではありますが、月は太陽とは異なる性質のエネルギーを持っていて、人間の持っている波動と共振共鳴を起こします。敷地条件によってはこの月の持つパワーを活用し、設計する手はありません。月を際立たせる為の空間構成や素材感、色使い、それから壁の量によって情報をコントロールし静謐な空間をつくり出します。静謐な空間から月を眺めることで様々な気付きが得られます。その気付きとは人それぞれだとは思いますが、宇宙の深淵さを感じたり、あるいは宇宙との一体感を感じることなどです。
人は意識的になることで多くの気付きを得られます。それが、最終的には人生に求め続ける居心地の良さ、つまり絶対的な安心感を得るのだと思います。これは永続的な感覚的であり普遍的なものです。
この住宅から来月にやって来る中秋の名月が見えることを期待しています。

 

「静謐さ」について

静謐さとは“静かで穏やかなさま”という意味です。静謐さとは、概念なので形として表現できませんが、私の感じる静謐さとは、早朝の朧な光が満す静謐さ、あるいは音がふと途絶えた時の静謐さ、夜空を見上げ宇宙の深淵さを感じた時に訪れる静謐さなどです。私は仕事柄建築を見ることが多いですが、これまで体験した空間の中で魅力を感じた建築には必ず静謐さがありました。以前ご紹介した谷川美術館もその一つです。この美術館は、光源を見せないことで光を絞り、また天井、壁、床を同素材にし境界を曲線にすることで一体化しています。建築に関わるすべての情報(開口部、天井、壁、床などの構成要素、素材など)を極限まで減したこの空間のつくり方によって、静謐さに満たされているのだと感じました。
人は静謐さに満たされた空間の中にいると、深い瞑想状態(I am 私は在る)となることができ、そして精神世界へとつながり自分の内なる空間を発見します。そして、自分の本質に気付くことができます。
建築や住宅とは、この静謐さを具現化し顕在意識を超えた潜在意識の世界へと繋ぐきっかけになるもだと考えています。