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朝の光とダイニング

私は朝どのような景色を見て何を感じるかは、とても重要だと考えています。なぜならそれによって、その日一日の気分が変ってくることを体験しているからです。例えば、旅先での楽しみの一つである朝食は、朝の清々しい光を呼び込むダイニングで過ごすことで、前向きな気分で始まります。このことを考えると、毎朝食事をとるダイニングの役割はとても大きいと思います。住宅の設計では、一般的に南側に開口を設けリビングやダイニングを配置することが多いですが、この敷地ではダイニングを東側に配置し、緑やバードバスのあるテラスを設けました。朝の光と共に見る景色や緑から感じる生命力によって、気分が高揚し、きっと今日が活力あふれる一日となると思います。このような毎日の積み重ねこそが、明日や未来への人生の幸福度、満足度に繋がっていくのだと信じています。

 

 

 

その遺伝子のもたらすもの

先日「六本木ヒルズ・森美術館15周年記念展 建築の日本展:その遺伝子のもたらすもの」を見学して来ました。同展では、古代からの伝統を礎としながら、独創的な発想と表現を内包している日本の建築に着目し、木造文化や固有の美学、西洋から見た魅力など、日本建築の特性をテーマに9つのセクションで編成してありました。

01 可能性としての木造

02 超越する美学

03 安らかなる屋根

04 建築としての工芸

05 連なる空間

06 開かれた折衷

07 集まって生きる形

08 発見された日本

09 共生する自然

古代から現代まで脈々と潜む日本建築の「遺伝子」について考察していく内容です。貴重な建築資料や模型など400点を超える展示物があり、千利休作の茶室、国宝《待庵》を原寸で再現、昔の丹下健三の自邸を1/3スケールで再現した巨大模型、ライゾマティクス・アーキテクチャーが最新技術で再現する日本建築のスケールを3Dで体感などが見どころです。日本建築の美学をベースとし、現代の建築にどのような表現としてあらわれてきているのか、それを感じることができた展覧会でした。

 

 

 

 

隈研吾 ささやく物質・かたる物質

2018年3月3日~5月6日まで東京ステーションギャラリーで「くまのもの 隈研吾とささやく物質、かたる物質」が開催されていました。本展では竹、木、紙、土、石、火、金属、幕/繊維という10種類の物質で分け、それぞれの作品の模型や写真が展示されていました。物質のもつ質感、匂いまでも感じることができる構成です。竹のコーナーでは、オジェがあり竹のしなやかさが波を連想させてくれます。また「石」の展示室では、石に隙間を開けながら積むことで物質の重さではなく、反して軽さを感じます。「木」の展示室では、小さめの部材を大量に組み合わせ多彩な形態を創り出しています。様々な物質がこれまでにない形状に変化し、物質の放つ風合いを残しながらも持っている特性をさらに進化させた建築になっています。物質の使い方には、無限の可能性があることを強く感じました。『もう一度、様々な物質と、いきいきとした会話をはじめよう 。』このメッセージを五感で感じとることができた、とても魅力ある建築展となっていました。

 

 

 

 

 

太陽の塔

岡本太郎記念館は、岡本太郎氏が亡くなるまでの40年以上の間、住宅兼アトリエとして使用されていた建物を1998年に記念館として開館しました。この記念館は、岡本太郎氏が暮らした当時そのままを見学できます。設計は、坂倉準三氏でコンクリートブロックを積んだ壁、鉄筋コンクリート柱・その上にR状の屋根をのせるスキンストレス(応用外皮構造)を採用しています。アトリエには「太陽の塔」の制作途中のモニュメントや内部の模型がありました。今年3月には、大阪にある「太陽の塔」の内部が修復され展示施設に再生されています。1970年・日本万国博覧会のシンボルモニュメントとなった「太陽の塔」は、高さ70メートルあり建築家・丹下健三氏が設計した、テーマ館の大きな屋根を突き抜ける形で設置されました。未来に向かう生命力の象徴と考え制作され、内部にはマンモスやアンモナイト・単細胞生物の模型が飾られています。進化の頂点に人類がいるとは考えていなかった岡本太郎氏は、人類を小さく展示し、本質的な生命のあり方を古代生物に求めたと言われています。人類も自然、宇宙の一部でありそれらの生物と同列と考えいたのだと思います。48年後の今、修復・再生された「太陽の塔」をいつか訪れた時に岡本太郎氏が問いかけたメッセージを感じ取り、今後の仕事に反映させていきたい考えています。

 

桜並木

昨年夏に完成した住宅です。この桜並木が見えるロケーションをとても気に入られて、建築されました。今年はとても早く桜が満開になりました。川を挟んで桜並木が広がり、平日にもかかわらず写真を撮っている人が何人かいました。お施主様は、週末に桜を眺めながらバーベキューをしたそうです。春の気持ち良い風や草花など季節ごとに変わりゆく景色が、暮らしを豊かにし心を癒してくれているのだと改めて感じました。

二世帯住宅

小矢部市の山間部で二世帯住宅を設計する機会がありました。計画地は、もともと親世帯が住んでおり今まで離れて暮らしてきた子世帯が、ここで一緒に暮らすことを選択されました。設計を描く上で住宅に求められる快適さや居心地の良さを追求しながら、それと同時に二世帯住宅が抱える課題を解決する必要がありました。それは、親世帯が培ってきた近隣コミニュティの継続と親子間の良好な関係です。具体的な解決方法として、親世帯のキッチン・ダイニングの北面に大きな窓を設けました。窓とは採光や換気、景色を取り入れることが目的なのですが、ここでの窓の取扱いは、近隣へのコミニュティの意思表示です。この窓からは、近隣住人が行き交う姿が眺められたり、あるいは窓越から会話することが出来ます。昔から培ってきた近隣コミニュティを維持していく為にとても大切な役割を担っています。一方、親子間の良好な関係を築く為には、程よい距離感が必要になってきます。設計の中で程よい距離感という曖昧さを持つものを数値化し、図面に落とすことは大変な作業です。なぜなら、曖昧さを数値化するには、経験から得た感覚と俯瞰してみることが出来る客観性が必要だからです。これらのことを踏まえ、この二世帯住宅のリビング間は、中庭を挟み6mとしました。空間どうしの幅や高さ、窓の位置や大きさなど総合的に判断し、お互いの存在感を感じない距離を数値化した結果です。数値化することは、建築にとって大切なことであり、情緒的な感情論ではなく理論的な考え方を用いていかなければなりません。そのことによって、この二世帯住宅が抱える課題である近隣コミニュティや親子関係が、良好に維持されていくのだと考えています。

 

新しいコミニュティ

以前、集合住宅を設計したことがありますが、戸建住宅を設計していく上で今後の家づくりのヒントになるのではないかと考えています。時代が進む中で多種多様な住まい方が求められ、その中でも特に地域と繋がるコミニュティの形成の仕方は、大きく変化してきているような気がします。7年前に横浜市で計画した集合住宅も当時、同じようなことを思い設計しました。プライバシーを確保しながら住人同士の緩い繋がりが、心地良い関係性を築くと考え10戸を4棟に分けています。塀など建てることなく建物をズラすことで、それぞれが向かい合うことなく配置され、建物の距離や上下の高さに変化を与え、窓辺には住人の暮らしぶりが垣間見ることが出来るように工夫しました。ただし、住人同士の目線が交わることはありません。窓辺から見える住人の好きなも、例えばインテリア、観葉植物、フィギュア、本などを垣間見ることで、それぞれの楽しい暮らしぶりが分かり、それを元に会話が生まれ、緩い繋がりを形成していくと考えました。この集合住宅で生まれた住人同士の緩い繋がりは、戸建住宅が地域との間に新しいコミニュティを形成していく一つの形だと思います。戸建住宅は、自然環境を最優先させた配置計画や窓辺など大切に設計されてきましたが、今後、地域とのコミニュティ形成の仕方を検討した配置計画や窓辺などが、求められ多種多様に変化し複雑化していくのではないでしょうか?

 

 

響く

アトリエレトノの「レトノ」は、ラテン語で「響く・反響する」という意味があります。設計の原点には、空間の響きが大切であると考えアトリエレトノの事務所名としました。空間の響きとはなんなのか?なぜ大切なのか?響きとは、二つのものが共鳴し合うイメージです。建築における響きとは、空間を構成する物質が、相対的な関わりによって生まれてくるものだと考えています。例えば、庭の緑は絞られた光または、反射光がなければ輝きません。開口部のフレーミングを際立たせる為には、周りにある程度の量の壁が必要です。また、ダイナミック性は空間の面積や体積の大小によって生まれてきます。このように相反するものや、そうでないものもがあり、空間を構成するあらゆる物質において、無限の可能性があります。そのように空間を響かせることができれば、精神性の感じる静謐な空間となります。一般的に住宅には機能性を求められますが、一見無駄だと思われるようなこの行為こそが、最も最優先されるべきものなのです。その可能性を今年は、もっと深く探求していきたいと思います。それが人の心を動かし、日常に小さな気付きをもたらし、住宅の最大使命である、人生の幸福につながっていくのだと考えています。

 

 

 

アマン東京

アマン東京は、アマンリゾートの主要デザイナーであるケリーヒル氏が、手掛けた世界初の都市型ホテルです。アマンリゾートのコンセプトは、その地の伝統や文化を取り入れることを大切にしています。アマン東京も日本の伝統的な意匠である障子や和紙を用いて、静謐さや上質さがありながらモダンな空間となっていました。また、別棟にあるザ・カフェBYアマンは、3年以上をかけて1つずつ選び抜いた100種類以上の植物で構成されいます。店内に入るまでのアプローチは、そんな緑に囲まれ、まるで森の中を散策しているような感じを受けます。ガラス張りになっている店内は、とても洗練されていて、どの席からも緑が美しく見えます。都心のビジネス街であることを忘れさせてくれる、心癒される憩いの場となっています。アフターヌーンティーは、見た目も美しくとてもおいしかったです。

 

石という原始的な素材が放つ力強い雰囲気が好きなので、人の手が加えれられていない荒々しさの残る鉄平石や上質な雰囲気をもつ芦野石を使い、内部の床を仕上げました。同じ石でも採れる場所によって硬度や色目が違い、それにより扱い方が違ってくることを職人さんから教えてもらい、改めて石という素材について多くのことを学ぶことができました。建築とは、設計者、監督、職人との共同作業だということを再認識しました。この住宅に一歩入ると、石の持つ力強い雰囲気と内包感を感じる空間構成によって、本能的な居心地の良さに繋がるのではないかと考えています。